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2012年3月「改化(KAIKA)プロジェクトに寄せて」

劇団衛星代表・蓮行であります。

私は、大学1年の時に女の子にモテたい一心で学生劇団を立ち上げました。それは、完全にその時点で「プロ化」を指向しているものでありました。
今振り返ってみると、まだ10代だった私の志は高く、劇団をすれば劇団内で創作を通じて女の子とのコミュニケーションをたくさんとることになり、それが恋愛感情の芽生えや男女交際につながるといういわゆる「内モテ」指向は弱く、「演劇では食えない」という当時の「定説」を打ち破ることによって広く社会全般の「賢い大人の女性」のハートを掴むはずだという「外モテ」を強く指向したものでした。しかし、学生劇団はそこで数年を過ごす大学生のために創作の機会を提供すべきだという、「学生劇団の存在意義」と、プロ化という目標設定の矛盾が顕在化したため、21歳で「劇団衛星」を設立しました。

当初は3年ほどで劇団員全員が「メシを食える」状態にするつもりでしたが、現実はそう甘くはなく、劇団衛星は結成10年以内にプロ化する、ということを公約として活動を続け、結成10年にして、劇団員全員アルバイトを禁止しプロとして年俸制で雇われる、という体制に移行しました。
それから幾多の危機を乗り越えつつも、演劇とそれに関連する仕事のみを業とし、プロ化後、丸8年が過ぎようとしています。

その我々の活動歴を振り返ってみると、こんな考えが浮かび上がってきます。19歳の私が直感的に疑いを抱いた「小劇場演劇では食えない」という「定説」は、「悪しき神話」だったのではないか、と。
この「食えない」神話は、多くの小劇場に関わる演劇人が異口同音に口にする「いつか食えるようになりたい」という台詞と表裏一体となっており、あきらめて辞めていくことを正当化し、社会において虐げられることを悪い意味で甘受し、本気で新しい方法を探ろうとする者を排除しようとしてきました。
逆に言えば、この神話を打ち破ることが、若い優秀な人材が演劇を見限って流出してしまうことを防ぎ、演劇の正当な社会的評価を獲得し、様々な新しい試みへのチャレンジを促すことになるのではないか、との考えに至りました。

一方で、プロとして活動してみると、社会が今、非常に不安定で、一寸先は闇であることを肌で感じます。今できていることが来年できるとは限らないし、ある方法を確立したとしても、3~5年で完全に書き換えられてしまう。なので私は、10~50年の大局観に立った経世済民のほにゃほにゃ…といった大風呂敷は広げず、とりあえず「~してみる」という形で、改化(KAIKA)プロジェクトを提言してみます。

まず、数値目標を提げて「みる」。京都市域に専業演劇人を75人、1回の公演で1000人の観客を動員する劇団を7劇団、誕生させられるようにあの手この手を打ってみる。
しかもこれは、我々の手によって…!と構えているわけでもなく、ぽかーんと口を開けている間によその冴えた人達の手によって実現したとしても、むろん一向に構いません。

この目標を達成するために、私たちはすでにプロである演劇人達と共闘し、これからプロにならんと本気で志す者を支援します。
また、その活動で、創作者の主権を尊重することを忘れず、市場に歩み寄りすぎず、さりとて拒みすぎず、さらにはこれが世のため人のため…などとピントをぼかすことがないように、と自戒もここに記しておきます。

具体的な数字込みで掲げて「みた」目標でありますが、近い将来実現する気は満々で、ここに「改化」を宣言するものであります。

2012年3月


劇団衛星代表
KAIKA芸術監督 蓮行